2014年8月28日木曜日

北米の建物規制


聞き手T:高原
聞き手Y:山口
受け手M:モントリオールJCPデザイン増本氏 


 

T:先回のQA北米のガーデニングの時に、道路側フロントヤードの芝生の管理では、
  町を美しく保つ為の、規制をご紹介いただきました。そういえば、カナダ研修でも
  感じたことですけれども、どの家のフロントも、そのストリートは芝生が連続して
  いました。これは芝生の管理以外に、このストリートは、此処まで芝生を貼りなさい
  という規定があるからと想像します。これと同じように建物にも、デザイン上で
  規定があるのでしょうか。

 

M:建設に関する法律は各州に任されていますが連邦政府作成の法を使用する州と独自の
  法を持つ州があります。ケベック州は、州政府の建築基準法を適応しますが、
  それぞれの行政地区もコミュニティとしての住まいのハーモニーを保つために街独特
  の条例を追加しています。

 

Y:例えば、どんな規定がありますか。

 

20世紀初頭にダウンタウンからロワイヤル山をトンネルで抜けた郊外に造成開発
  された住宅地でTMR (Town of Mount Royal)というところがあります。こちらは、
  ガーデンシティ構想のもと作られました。現在は裕福な住宅地として人気の地区
  ですが、コミュニティの景観を保つために、開発年代に合わせたゾーニングに沿い
  建てられる家のデザインが決められています。
 
 


 

phase 1 Faubourg house,  Garden house

phase 2  English mansion, New England, Georgian Canadian style

phase 3  Cottage, Split-level house, Prairie house, bungalow

また、こちらはガーデンシティをテーマとして作られた町なので、庭もphase 1では75%以上、phase 2では70%以上、phase 3では60%以上の緑で覆われていることが定められています。
 

Y:建てられるデザイン様式が決められているのですね~。中央の公園を囲むように
  分けられているのも面白いですね。


 

M:また、飛行場後に開発されつつあるBois Francという住宅地は、地域全体の景観や
  ハーモニーを保つため、外観デザインや使用できる建材が決まっています。フロント
  ヤードの美観を保つためには、地下にあるガレージへのエントリーは、建物のサイド
  からと決められています。Westmountという住宅地は、エリアによって制約があり、
  道路から50フィート(約15m)も下がらないといけないエリアがあります。外壁は
  煉瓦または石で、窓の高さや幅まで決められています。
 

Y:へ~、窓の高さや幅まで徹底しているのですね。大体、この一つのコミュニティの
  ルールや計画が出来上がるのに、どれくらいの年月をかけられるのでしょうか。
  また、そのコミュニティが完成するまでに、ある程度時間がかかると思いますが、
  途中で、ルールが変わるということも時にはあったりするのでしょうか?


M:TMR市が開発されたのは1912年、Westmount地区はカナダが始まった時からの歴史を
  持ちますが、Westmount市となったのは、1895年です。地形の制約上、これから
  建てる場所はなく、更地にして新しく建てることを禁止している地区もありますし、
  新築となると現代の法規が適用されるため制約も多くなりますから、大体土台を
  残して上を新しくする方法がとられます。これも地区によって70%以上の取り壊し
  禁止とか、さまざまな規制があります。TMR市の場合、見直しを必要とする条例は、
  市議会によって決議され、最新は20127月のようです。条例は、厳しく改正される
  ことがあっても緩むことはありません。それぞれのMunicipality(市当局)が条例を
  作成施行し、違反者は罰せられます。
 

Y:完全に、不動産がデベロッパー任せにはならないという事ですね。市が介入する
  ことで、街はまとまり、結果的に『美しい街並み=価値が下がらない街』を実現して
  いるのでしょう。100年も前からこんな合理的な考えで開発されているという事が
  圧巻です。

 

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