2014年3月28日金曜日

北米の中古住宅事情その1の訂正


申し訳ありませんでした。

昌子さんから、以下の箇所の間違いを指摘されました。

こちらでの編集時に解釈をミスしたようです。

 
 

[訂正前]

 

M:カナダでもメンテナンスをしなければ同じです。新築時のそのままであれ  ば毎年1%の価値ダウンになります。 

 

 

 

[訂正後]

 

M:カナダでもメンテナンスをしなければ同じです。何もしないと毎年3~4%は確実に価値ダウンになるので、10年後には43%ものダウンです。しっかりメンテナンスしている家は年1%のダウンです。





2014年3月21日金曜日

北米の中古住宅事情その2

聞き手T:高原
受け手M:モントリオールJCPデザイン増本氏

T:前回で大体の感覚は掴めたのですが、北米では転居のサイクルが多いというのが、“Resale house”のファクターのように思えます。
 では、どんな理由で転居されるのですか。

 

M:以前にも高原さんに話しましたが、北米では子供は16才で自立のために自活するのが平均です。家族構成が早い段階で変化しますので、間取りもしくは部屋数そして、家自体の大きさも変化させていくなど、様々な状況下においての合理性を求めて転居があります。

 

T:改めて驚きますね。30才でも未婚なら両親と同居がある日本とは大違いですね。たしか、北米では長男や長女が結婚しても同居はないとのこと。
  それと、北米の合理性による転居も日本人にはまだまだ心理的に抵抗がありますね。
  ところで話はもどりますが、メンテナンスをしっかりやるから値下がりしないそうですが、どんな箇所をするのですか。
  日本では、外壁の塗り替えか便器やエアコンの取り換え程度ですが。

 

M:そうですね、メンテナンスというよりグレードアップがキーワードでしょうか。思いつくだけでも以下のことがあります。
  外部では窓、玄関ドアー、フロントヤード、外壁の張り替えなどです。
  内部ではバスルーム、キッチン、空調(オイルから電気、ヒートポンプ)、
  電気アンペアグレードアップなどです。

  

T:これはすざましいという表現になってしまいます。費用も並みの貯金では無理ですよね。それほど転売条件に有効に働くのですね。
  これで、DIYセンターでの本格的な大工工具や窓や玄関ドアーが販売されているのも頷けます。日本では、自分で仮にそこまでグレードアップしても、価格に反映されないから諦めている感じですよ。その辺のシステムがあるのでしょうか。

 

M:しかし、どこまでもグレードアップする訳でもありません。周りの家とかけ離れたことでは価格に反映されません。例えば土地だけ買って高価な建物を建てようとする場合でも考えなくてはいけません。
周りも段階的に立派になっていくことが大事です。インフラ(道路や公共施設等)の整備等で毎年6%の価格上昇をなすことのエリアがあるぐらいですから、ストリート全体のイメージはポイントになります。
よく高原さんが言っている陳腐化しないデザインとは町区画単位で統一されたハーモニーのことではないでしょうか。
 そして評価システムは、専門家のチェックと法規や指針が充実しています。
 たとえば、売買時に隠れていた欠点が見つかった場合の補償制度などがあります。
 もちろん消費者は、自分の住みたい町の家の大体の値段は常識として知っていることが前提になります。

 

T:さすがに“Resale house” に対する社会全体の仕組みが出来上がっているのですね。転売する時に街区またはストリートも大きく影響する訳ですね。

 「ロケーション、ロケーション、ロケーション」の意味が解る気がします。


その点は日本ではまだまだですが、最近は政府も既存住宅の取り壊しなどの国全体のエネルギーロスの観点からも、今後のメンテナンスの評価などの方法の検討に入っているようです。
初回から北米住宅政策の根幹に触れる話題になってしまいました。次回からはもう少し日々の生活にかかわる話題を話し合いながら北米と日本の住まいのあり方を見ていきたいと考えています。






 

2014年3月18日火曜日

北米の中古住宅事情1


聞き手T:高原
受け手M:モントリオールJCPデザイン増本氏

 

T:北米では中古の住宅が値下がりしない上に、取引数量も新築の2倍程度だそうですけ
   れど、実際はどうですか?私達日本では考えられないので、その秘訣というか社会通
   念の違いなどを教えてもらえないでしょうか。

 

M:実際に既存住宅の取引数量はカナダでは新築の2.5倍、アメリカでは3倍です。

まず、このお話は社会通念のことから入りましょう。

  第一印象で「中古住宅またはUsed house」という呼び方の違いを感じます。こちらでは「Resale house」です。それは購入してすぐ転売されるものから改装してから転売されるものなど、いろいろです。もちろん、値下がりはありません。
  ちなみに新築住宅は「New house」です。

 

T:なるほど、“古くなった家”ではないのですね。

 

M:いきなり話が飛びますが、私の住んでいるカナダではある銀行の調査で20才から80
  までに平均5回持家を変えるとあります。ざっくり均等に分割すると12年に1回転
  売するので、家が古くなる前に出て行ってしまいます。そこに家の寿命ということが
  意識に無いわけです。前述の期間中に賃貸での引っ越しは入りませんから、なおさら
  かも知れませんね

T:日本人は一生に多くても2回の建て替えですから、家が古くなっていく過程は当然味わいますね。いろいろなところが痛んできますし、デザインも古くなってきます。転居は賃貸アパートでは数回ありますが、持家戸建ては住まいの集大成ですから、それからの転居は少ないですね。だから日本の中古住宅の市場規模は新築の2割にも満たないのも頷けますよ。しかしカナダでも、家は経年すれば痛んできますよね。

 

M:その通りです。カナダでもメンテンスをしなければ同じです。新築時のそのままであれば、毎年1%の価値ダウンになります。ところがカナダ人はメンテナンスフィー(維持・手入れ費)を家計に予算化して、常に維持改装に充てているから、家は古くなりません。修理が必要な時ではなくて、休暇が取れるとき、労務賃金が安くなる時期、資材価格が安くなった時などに予算をあてます。

  日本では優先順位が“衣食住”ですが、こちらは統計上では“住食衣”なんです。




 

    

T:やはりメンテナンスで、転売の時に住宅価値を下げないように努力しているのですね。
  日本では転売する訳ではないので、メンテナンスは積極的ではありません。当然、10年程したら新築価格50%というのも物理的に少し理解できますね。

 
  さて、この中古住宅事情いや失礼しました“Resale house”はもう少し質問しなくて
    は輪郭が解りにくいので、今回はこれで一区切りにして、次回も同じテーマで継続さ
    せてください。