2015年6月30日火曜日

Lighting plan


聞き手Y:山口
受け手M:モントリオールJCPデザイン増本氏 


 
Y: 先日、照明の新商品の展示会へ行って参りました。照明もハイテク化が進んでおり、
  携帯で遠隔操作が出来るような時代が来ていることを知りました。
  便利な時代ですよね~。ただこのハイテク化には、ただ便利であることや
  節電ということだけではないようです。読書に合った配光配色。絵を美しく見せる
  ための配光配色。映画を見るための配光配色。それぞれのシーンに合わせた、
  ベストな明かりの状態を選ぶことが出来るような機能も付いているようです。
  それだけ、明かりの演出は重要だという事ですね。
 
M:そうですね。こちらでも、最近はタッチパネルひとつで家中の灯りの具合を調節
  できる機器が売れているようです。
 
Y:それにしても、日本とカナダでは部屋の明るさが違いますよね。カナダの方たちは
  照明計画を考えるとき、どういう事に重点を置いてみえますか。
 
M:日本は全体照明が主役で、デスク用の灯りを部分的に補足していく感覚で照明計画
  をすると思いますが、カナダでは一つの照明ですべてをまかなうのではなく、
  『Task light(日本でいうデスク用照明)+Accent light(アクセント照明)』が
  照明の主役で、Ambient light(全体照明)が足らない明るさを補足するという感覚
  で照明計画をする点に違いがあると思います。
 
Y:確かに、海外のお部屋の照明は、全体的には暗い印象ですが、ベッドの両脇に置く
  照明なんて素敵ですよね~しかも、ベッドで本を読むための明るさもしっかり確保
  できるので、何日か泊まると、この明るさが心地よくすら感じます。
 






 
 
M:どうしてこのような『あかり』に対する感覚が違うかを考えると、家の建て方が
  違うからではないでしょうか。日中天気のいい日に戸外から室内に入ってもさほど
  差のない明るさが得られる日本家屋と、ドアを閉めるとかなりの日光が遮断される
  石造りのこちらの家を比べると、『木や紙の文化のあかり』と『石の文化のあかり』
  に対して異なった感覚を養ってきたと思います。
 
Y:日本には、障子があって戸を閉めていてもあかりを確保出来るので、部屋全体が
  明るいということに慣れてきたという事でしょうか。
 
M:そうですね。例えば、Ambient lightは部屋でなされるアクティヴィティが必要と
  される明かりの量の3分の1をまかなうようになっていて、こちらでは、これが
  不自由を感じない明るさだそうです。それ以上の明るさを必要とする場所には
   Task lightで補うので、部屋の中で明かりのニュアンスにバリエーションが
  生まれますね。
 
Y:だから、カナダを訪れたときに部屋が暗く思えたのですね。
 
M:ただ、こちらでも照明の進化によって、生活空間は飛躍的に明るくなり、
  照明デザインも選択肢が増えたとあります。ある記事によると、全体の30%の
  明るさのAmbient lightを心地よく感じる世代と異なる新しいニーズがあると
  ありました。若い世代の家では、蛍光灯やLEDが多いという記事も目にします。
 
Y:それは意外ですね~
 
M:全体的な明るさを心地よいと思う日本人的明かりへの志向も見られるようになって
  来たようですよ。
 
Y:そうなのですね!だから、日本でもカナダでもどの世代でも共通して使える、明かり
  を自分好みに調整できる照明器具が誕生したのでしょうね。
 
 PHILIPS hue ←←←明かり革命
 

 

2015年6月6日土曜日

Bare wall 壁の装飾について


聞き手Y:山口
受け手M:モントリオールJCPデザイン増本氏 




Y:日本では、お雛祭りや子供の日にお人形を飾ります。カナダでもイースター、ハロウィン、クリスマス以外で、地域に関係なく共通して、行事の時だけ何かを飾るという習慣はありますか?

 

M:カレンダーを見てざっと数えると42日くらい何かの日がありますが、飾り物をするイベントはイースター、ハロウィン、クリスマスくらいですね。日本のような生活の中の季節のけじめみたいな風習はなく、おおよそ宗教関係のイベントがほとんどです。それでも宗教離れが言われる昨今、クリスマスとイースターとサンクスギビングは親元に顔を出す3大ホリデーとして生活の中にしっかり根付いています。

 

Y:日本よりも色んな人種の方が住んでみえるからですね~。

 

M:イベントではありませんが、お家の中の飾り方で、日本のお家は壁に直接飾るというより、壁面近くに色々置物がありますよね。こちらでは、小物や写真を棚の上に飾り、壁面を直接飾ることが多いと思います。Bare floor は、もうトレンドになったけれどBare wallはまだ抵抗あるみたいです。

 

YBare floor??Bare wall??馴染みのない言葉ですね。

 
M: Bare floor は絨毯もない裸の床面、 Bare wallは飾りのない裸の壁面のことです。
  昔はBarefloorは、絨毯も買えないことの代名詞みたいだったのですが、今はフローリングの
  床がオシャレな生活というトレンドです。それでもまだBare wallは、味気なく殺風景と思われる
  でしょうね。

  Bare floorの施工例


  

 Barewall 施工例


Y:素敵なお家ばかりですね~絵を飾るだけでなく、モールディングや造り付け収納、ペイント、壁紙など・・・きりがないくらい色んなパターンがありますね。

 

M:伝統的室内の壁仕上げはウッドパネリング、フラスコそしてタペストリ ーでした。19世紀に入り経済的余裕のある庶民の住まいにはタペストリーの模倣として、William Morrisに代表される様々な絵柄の壁紙が好んで使われるようになりましたが、普及するにつれ人気は落ちていきました。20世紀に入り庶民が壁紙を容易に入手できるようになり、支配階級の邸宅は壁の仕上げ材として、高級建材に志向が移りました。今でも壁紙は装飾性に富む素材として一部に人気がありますが、高級素材の壁(ウッドパネル、漆喰、グラスパネル等)に比べて安価な仕様とみられ、プラスターボードペイント仕様の壁がよりハイグレードと評価されています。
 
 
 
Y:壁の装飾が富の象徴でもあったのですね。
 
MBare wallという観念は、18世紀ごろはタペストリーなどを飾る以前の壁の事でカーペットの敷いてないフローリングの床と同じ意味合いに使われていました。現在では、高級建材でもないのに壁をむき出しにしたままでいることへの無関心さが問題になっているようです。ペイント壁のままではなく、装飾を兼ねた壁面の演出に人気があるのは、やはり歴史性を含んでいるように私には思えます。
 
Y:日本でも昔の上流階級のお屋敷では、欄間の彫刻や、屏風、床の間の掛け軸など豪華な装飾がありましたが、今ではなかなかそれを見ることがなくなったと思います。どちらかというと、『自然のままの趣』を良しとしてきた習慣が残っているのかもしれませんね。
 
M:絵画史からいうと、人類は太古の昔から壁面にいろいろと「いまの自分」を書き残してきた習性から、自分のすまい空間を自分なりに演出できない人は、常に住むところを移動する、じっくりと根を生やして生きていく空間を作り上げられない人間とみなされるようです。住んでいる空間がその人の生き方を醸し出していることが大切のようです。
 
Y:室内装飾そのものが個性表現というわけですね。だから、色々なパターンが見られるわけですね~。