2014年6月2日月曜日

北米の家庭料理とキッチン環境

聞き手:山口
受け手M:モントリオールJCPデザイン増本氏

 
 
 
Y: 北米住宅視察や海外ドラマで見る、広くてかっこいいキッチンは、やっぱり憧れちゃいますね~。その上汚れていない・・・。実際家庭でどんな料理が作られているのか気になります。教えていただけませんか? 
 

M: 一般的に、朝は至極簡単でしょうね、TVコマーシャルでも朝はシリアルとジュースとかです。殆んど共働きですから、キャラ弁などは作る暇はないですし、そういう文化もありません。お昼はみんなランチを持っていくか、外食で、夕食のみ家族で一緒に食べるかな。我が家も朝は果物とパン系です。
 

Y: 確かにアメリカの朝食は、シリアルのイメージありますね。日本の朝食といえば、パンもしくは、お味噌汁とごはんに昨晩の残り物のおかずといった感じですね。
 
 
M: 2004年に行われた調査から現代のカナダ人の食生活の実態が浮かび上がりました。35千人以上の人に、聞き取り調査した結果によりますと、35年前に比べると、摂取カロリー量は減少しているそうです。しかし野菜や果物の摂取量が目立って少なく、とくに4歳から9歳の子供たちは、野菜や果物と共に乳製品の摂取量も必要量を下回っている結果が出ました。また、1/4のカナダ人が、日常的に何がしかの「ファーストフード」を口にしている実態も浮かび上がりました。
 
下記の週間メニューを紹介するサイトをご覧ください。
  ◇カナダ週間メニューhttp://www.womansday.com/food-recipes/month-of-menus/ 

平日のメニューを見ますと、ほとんどが、オーブン料理かパスタ料理で、共働きの母親が帰宅後の時間を有効に使えるメニューがほとんどです。

共働き、郊外の戸別住宅、託児所や学校の送迎など、キーワードを並べると、主婦が家庭で過ごせる時間が限られていることも明らかですね。

 
 


Y確かに、ご主人と同じように働いていたら、食事を作る手間はあまりかけられませんね。オーブン料理や、炒め料理、パスタなどの単品料理が多いのも、単に好む料理が違うだけでなく、生活スタイルに違いがあるからということですね。
オーブン料理が多いという事ですが、日本は、焼く、炒める、煮込むといったコンロを使う料理がほとんどです。また『一汁三菜』の様に、主食のおかずとなるものの品数が多く、料理をする時間だけでなく、品数が多い分、使うお皿も多くなります。
ですから、日本では、キッチンには収納量と、広さ、シンクの大きさが、求められます。最近では、アメリカやカナダと同じようにビルトイン食洗機が付いている家も増えてきましたが、それでも、シンクは広い方が好まれます。そう考えると、日本のキッチンの方が大きくなるような気がしますが、海外のキッチンの方が広くて立派ですよね。どうしてなのでしょうか。収納しているものが異なるからなのでしょうか。
 
 
M日本の住宅事情、とくに土地の購入は厳しい現状にあると思いますから、日本の家が   小さくなるにしたがってキッチンも狭くなる理由は理解できます。北米のキッチンは、1926年に開発された、Frankfurt Kitchen(下記写真)は、1.9m×3.4mで換気設備の発達していない時期のモデルデザインとなり、住まいの他の部屋とは仕切られた『Work Kitchen』として集合住宅建設の増加とともに標準化されました。同時にキャビネット類もユニットキッチンとして大量生産されるようになり、Baby boomer(第二次世界大戦の終結直後に、復員兵の帰還に伴って出生率が上昇した時期に生まれた世代)の要求に応えてデラックス化していきました。
 
 
 
 1980年の換気フードの発明により、今まで1室に仕切られていたキッチンは、リビングへ解放されて以来、オープンキッチンが主流となり、家庭生活の中心を占めるようになりました。巨大キッチンは、Baby boomerの購買欲を満たすべく仕組まれたマーケティングのなせる業だったのでしょう。巨大なDream house、ビッグテラス、ビッグカー、ジャクジーなどなど)とともに、バトラーキッチン、ワインセラー、アイランドキッチン、エンターテイメントキッチンと、何もかも抱え込んだ結果がビッグキッチンとなり、今では『Massive,football field-sized kitchens with islands』と呼ばれています。
 
 
 
Y:そうなると、キッチンの大きさは、調理に必要だからというわけではないようですね。なるほど~巨大キッチンは『ステイタスの象徴』でしたか。
 
 
M:北米では、2009年の経済ショックを受けて、『大きい住宅』から、ヨーロッパに見られる『コンパクトハウス』が好まれるようになりました。その結果、コンパクトで作業がしやすく、便利、そして良質の材料を使ったシンプルなデザインが、これからのキッチンのトレンドとなるそうです。キッチンスペースとしては、平均約10㎡(約6帖)というところですね。調理用家電も、毎日使用する数点を残して、すべてキャビネットに収納することが普通です。
 
 
Y:以前より、家の大きさがコンパクト化し、前回のお話であったように、ホームパーティーも減ってきている現在では、それほどキッチンに大きなスペースを取らなくてもよくなってきたわけですね~。
 
 

 
 

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