2014年3月21日金曜日

北米の中古住宅事情その2

聞き手T:高原
受け手M:モントリオールJCPデザイン増本氏

T:前回で大体の感覚は掴めたのですが、北米では転居のサイクルが多いというのが、“Resale house”のファクターのように思えます。
 では、どんな理由で転居されるのですか。

 

M:以前にも高原さんに話しましたが、北米では子供は16才で自立のために自活するのが平均です。家族構成が早い段階で変化しますので、間取りもしくは部屋数そして、家自体の大きさも変化させていくなど、様々な状況下においての合理性を求めて転居があります。

 

T:改めて驚きますね。30才でも未婚なら両親と同居がある日本とは大違いですね。たしか、北米では長男や長女が結婚しても同居はないとのこと。
  それと、北米の合理性による転居も日本人にはまだまだ心理的に抵抗がありますね。
  ところで話はもどりますが、メンテナンスをしっかりやるから値下がりしないそうですが、どんな箇所をするのですか。
  日本では、外壁の塗り替えか便器やエアコンの取り換え程度ですが。

 

M:そうですね、メンテナンスというよりグレードアップがキーワードでしょうか。思いつくだけでも以下のことがあります。
  外部では窓、玄関ドアー、フロントヤード、外壁の張り替えなどです。
  内部ではバスルーム、キッチン、空調(オイルから電気、ヒートポンプ)、
  電気アンペアグレードアップなどです。

  

T:これはすざましいという表現になってしまいます。費用も並みの貯金では無理ですよね。それほど転売条件に有効に働くのですね。
  これで、DIYセンターでの本格的な大工工具や窓や玄関ドアーが販売されているのも頷けます。日本では、自分で仮にそこまでグレードアップしても、価格に反映されないから諦めている感じですよ。その辺のシステムがあるのでしょうか。

 

M:しかし、どこまでもグレードアップする訳でもありません。周りの家とかけ離れたことでは価格に反映されません。例えば土地だけ買って高価な建物を建てようとする場合でも考えなくてはいけません。
周りも段階的に立派になっていくことが大事です。インフラ(道路や公共施設等)の整備等で毎年6%の価格上昇をなすことのエリアがあるぐらいですから、ストリート全体のイメージはポイントになります。
よく高原さんが言っている陳腐化しないデザインとは町区画単位で統一されたハーモニーのことではないでしょうか。
 そして評価システムは、専門家のチェックと法規や指針が充実しています。
 たとえば、売買時に隠れていた欠点が見つかった場合の補償制度などがあります。
 もちろん消費者は、自分の住みたい町の家の大体の値段は常識として知っていることが前提になります。

 

T:さすがに“Resale house” に対する社会全体の仕組みが出来上がっているのですね。転売する時に街区またはストリートも大きく影響する訳ですね。

 「ロケーション、ロケーション、ロケーション」の意味が解る気がします。


その点は日本ではまだまだですが、最近は政府も既存住宅の取り壊しなどの国全体のエネルギーロスの観点からも、今後のメンテナンスの評価などの方法の検討に入っているようです。
初回から北米住宅政策の根幹に触れる話題になってしまいました。次回からはもう少し日々の生活にかかわる話題を話し合いながら北米と日本の住まいのあり方を見ていきたいと考えています。






 

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